[00:02.700]そこは 色とりどの花が咲き乱れる なだらか平原だつた [00:09.500]昼は春の日差しと夏の匂いに満たされ [00:13.200]夜は秋の空気と冬の星空に覆われる [00:17.200]地には 花々と虫 [00:19.500]森には水と緑と獣 [00:21.900]そして水場には 見目麗しい妖精たち [00:27.000]人跡未踏の土地にして 永遠の禁足地たる果ての島 [00:33.000]その名を アヴアロン [00:37.000]星の内海 地球という星が持つ魂 その置き場所の別名だ [00:46.000]その花園に人の姿をしたものがいる [00:51.400]質素ながら最上級の繊維で編まれたロ―ブを纏つた男だ [00:57.900]日差しを透かす 虹色の長髪 [01:01.100]清いなく遠方を見せる瞳と姿勢 [01:05.200]男は5世紀の もうじき滅亡であろう ある民族の島を後にして [01:12.000]自分一个人でこの楽園に 転移にしてきた [01:17.400]ある王に使えた魔術師だつたが [01:20.350]王の最後の戦いを前に 極めて個人的な女性問題で楽園に逃げ込んだ 非人間である [01:31.400]多くの神話 伝書に現れる偉大な魔術師たちの頂点の一人になつた物 [01:38.500]最高位の魔術師の証 世界を見通せる目 を持つ人と夢魔の混血人 [01:48.450]名を 花の魔術師 マ―リンという [01:58.100]マ―リンはてくてくと花園を歩いて行く [02:02.840]この楽園に果てはないが変化はあるらしい [02:07.450]島の末端に近づけば そにはブリテンという 現実に似た痩せた土地に変わつていた [02:16.450]目の前には荒削りな石で積み上げられた門があつた [02:22.500]門にはただ一言が刻まれていた [02:26.550]「罪なき物のみ通るペし」 [02:30.600]マ―リンは肩を竦あると 避けることなく 門を潜つた [02:37.100]途端 荒野だつた丘は一変する [02:41.500]地区から分厚い石の壁が屹立していき 魔術師を閉じ込めた [02:48.100]マ―リンを憎む 何者かの仕業らしい [02:52.500]「罪なき物のみ通るペし」 [02:56.800]男が罠と知りながら足を踏み入れたのは [03:01.000]その言業が痛かつたからだ [03:05.550]その時代を 全しの顛末を読み取ることが出来るマ―リンにとつて [03:11.500]世界は一枚の絵変わらない [03:15.450]マ―リンがもつと美しいと感じる絵 [03:19.100]即ち 人類のハシピ一エンドを望んではいるが [03:23.500]そこに人間ヘの ましてや一個人ヘの愛情はない [03:30.430]なので 幸福の反映の名のもとに [03:34.180]多くの人命を虫のように消費して来た [03:38.600]そこには善悪も好き嫌いもなかつた [03:42.550]だから罪の意識さえなかつた [03:48.100]罪なきものとは即ち 地上において 自分だけを指すかもしれないと 思う程度に [03:59.200]マ―リンは 人間に手を貸すだけ [04:03.100]王を作るだけ [04:05.600]それによつし国がどうなろうと 彼に責任はないし [04:09.500]罪悪感もなかつた [04:16.500]男は狭い独房の中 一つだけ浮きてた岩の名残に腰を掛ける [04:23.500]視線を上に上げると そこには壁に唯一開けられた小さな窓があつた [04:32.300]同じ時代であれば 男はどこに居ようと世界の全てを見届けることが出来る [04:40.600]花の魔術師は ここまでのあらもしを整理して 懐に忍ばせていた使い魔 キヤスパリ―グに語りかけた [04:51.250]最後の光景はもうすぐだ [04:54.000]その前に ちよつとだけ 昔の思出話をしよう