[00:00.00]その都市の名は、エクリス。 [00:05.92]かつて犯した罪により、永遠に閉ざされた世界。死に往く者が留まる、終焉の都市。 [00:22.82]暗い世界に縫い付けられた無数の影。温度のない息づかい。 [00:31.85]それは、この『死の都市』に迷い込んだ、たくさんの意識のかけら。 [00:40.30]肉体を失った彼らは、私が見守るこの地で、穏やかに消滅を待っていました。 [00:48.46]語り:中惠光城 [00:54.95]その中に佇むひとりの影。 [00:59.67]彼は次の『私』となるべく、強くエクリスの意思を血に宿して生まれた少年でした。 [01:17.27]エクリスは破壊と解放の力。 [01:21.95]その力が無意識のうちに働いて、大切なものを壊してしまわないように。 [01:30.17]彼は意識の半分をこの都市に封じられていたのです。 [01:38.36]現実での彼は、自分が存在しているという実感が薄く、心は常に遠くにありました。 [01:49.13]ぼんやりとした世界は、どんなことにも興味を持ちづらいものです。 [01:56.30]言われるままに息をしているだけの自分を、誰よりも詰まらない人間だと思うことはありましたが、 [02:04.44]それもまた彼にとってはどうでも良いことでした。 [02:11.67]いずれ『エクリス』を継承すれば、彼の意思は消滅するのだと教えられてきたからです。 [02:23.46]ですから、彼は『エクリス』を何よりも怖れ、激しく嫌悪し、 [02:30.33]『私』の存在をも否定していました。 [02:39.18]幻想と現実の狭間にある、忌まわしい『エクリス』。 [02:46.23]大きな月が照らす死の都市で、運命からの解放を望んだ、彼の名はーー