[00:08.031]季節は冬 [00:10.630]真綿のような雪がひとつ、ふたつ [00:16.615]日が落ちたばかりの [00:19.058]まだ仄かに青みがかった空から [00:22.380]舞い降りて来る [00:25.325]段々と髪に積もっていくそれを私は払おうともせずに [00:31.273]ただ歩いていた [00:34.595]地を擦るつま先はもう感覚を失われて [00:40.160]何を目指してもない 意思を持ってもない [00:45.535]ただのガラクタのような私 [00:56.152]クリスマスに向けて準備に追われる街はとっても賑やかで [01:02.487]光があふれるその場所は今の私とはかけ離れていた [01:12.602]敷き詰められた石畳がすっかり雪で覆われる頃 [01:18.661]私の足はある一本の道の前で止まった [01:26.098]なぜかわからない [01:29.032]でも立ち止まらなければならないような気がしたのだ [01:35.350]吸い寄せられたように その路地裏へと入っていく [01:43.094]背の高い街灯には明かりが灯っていたか [01:47.593]それはその場所を照らすのに 十分ではなかった 暗い道 [01:57.815]積もった雪だけが妙に明るかった [02:03.494]「…」 [02:05.833]真っ白い道に突然不似合いものが落ちた [02:11.846]「はね?」 [02:13.835]闇のように漆黒な羽がひとつ、ふたつ [02:20.103]私の進む方向へと落ちて来る [02:24.650]うんうん [02:26.017]私を導いている [02:33.029]その先で私はあなたに出会う [02:38.378]それは星のない真っ暗な冬の夜半のことだった