[00:01.000]プレゼント [00:03.330] [00:05.670]Vocal:Mitsuki & Lico [00:07.500] [00:09.460]Lyrics:少女病 [00:11.330]Compose&Arrange:ピクセルビー [00:12.860]翻译:静かに描く [00:14.340] [00:15.100] [00:15.610]果ての見えない広さだけが取り柄の貧困の街 [00:22.350]この場所に生まれ落ちてしまったが最後 [00:28.840]蟻地獄のように 抜け出すことは困難で [00:36.080]この街で生まれ育った 天涯孤独の青年【セリル】は [00:43.360]生きていくために 餓死しないために "殺し屋"となった [00:56.770] [01:01.060] [01:07.630] [01:09.520]けれど殺し屋というのは自称だけのこと [01:16.060]優しすぎるセリルは 仕事の悉くを失敗する [01:23.020]不出来な人間に何度もチャンスは与えられない [01:29.820]ただのなんでも屋として扱われるまでに 時間はいらなかった [01:39.050] [01:39.710]この街では そんな誰にでもできるような仕事は多くはない [01:47.830]報酬もスズメの涙ほど [01:53.680]このままでは 死ぬまでこの街から抜け出せない 先がない [02:01.150]悩むセリルに斡旋屋の老婆 新しい仕事の話が舞い込んだ [02:14.610] [02:17.300]『今日こそは実入りのいい仕事の話かと勢い込むも [02:21.320]老婆はただニヤリと笑うだけ [02:24.870]街のはずれに住むひとつの家族。 [02:28.160]そこで父親役を演じて欲しい、というよくわからない内容の仕事だった [02:35.980]年若い母親に、その娘と息子。 [02:40.130]彼らの本当の父親は亡くなっていて、再婚相手である詩人は [02:45.650]子供達が幼い頃に遠い国へ歌いに行ったきり [02:50.090]もう何年も帰らないという』 [02:53.930] [02:57.400]「——きっともう死んでいるんです」 [03:02.900]彼女【レイラ】は小さく囁いて [03:07.570]まだ幼い子供達は父親の顔さえ覚えていないのだと [03:17.460]「ただ、声と雰囲気はとてもよく似ています」そう笑った [03:28.550] [03:28.740]父親役を頼んだのは彼女ではなくて [03:40.640]誰からの依頼なのか首を傾げるけれど [03:49.950]歓迎し受け入れてくれるレイラの前では 断りきれず流されるままに [04:05.270]その役を引き受けていた [04:10.150] [04:10.400]日が落ちて帰宅する二人の子供達 [04:15.300]「お父さんが帰ってきたよ [04:18.460]ずっと会いたがってたよね [04:23.340]お父さん、という響きがくすぐったくて [04:28.400]けれど少し高揚もしていて [04:32.710]はじめこそ不審そうにされたけど [04:37.000] [04:37.120]屈託のない子供達 一度打ち解けてしまえばすぐに仲良くなって [04:48.240]優しい母親と娘と息子 4人の家族として [04:58.450]決して広くはないひとつ屋根の下 新しい生活がはじまった [05:11.560] [05:12.270]家に帰れば暖かな 明かりが灯り誰かが待っている [05:19.050]ただそれだけの出来事にも 小さな幸せ感じて [05:28.370] [05:29.260]『これまで家族というものを知らなかった彼にとって [05:33.020]それはたまらなく魅力的な空間で [05:36.500]それがまるで、本当の家族であるかのように錯覚さえして [05:42.270]子供達を養うために夜の仕事をしていたというレイラ [05:47.370]それを半ば強引に辞めさせ、自分が稼ぐからと [05:52.080]低賃金ながらも真面目な仕事に就く [05:55.760]この仕事は、自分一人が生きていくためだけのモノではない [06:01.020]そう思うだけで [06:02.700]いくらでも力が沸いてくる気がするのが不思議だった [06:06.540] [06:07.960]「音楽を奏でて歌うのが お父さんの仕事なんでしょう?」 [06:18.580]「聞いてみたい!」 [06:21.670]困り果てるセリルにせがむ 愛らしい二人の子供 [06:28.360]彼女に教わってたどたどしい弾き語りを覚えて [06:35.580] [06:35.840]決して上手いとは言えない歌でも 子供達は喜んでくれて [06:48.850]中でも繰り返し歌ったのは "家族の幸せな情景を表現した詩 [07:04.620]レイラが隠れて涙を拭っていたのは 帰らない彼を想ってのことか [07:17.660]やりきれない感情に苦しみながら それでもただ——ただ歌い続けた [07:31.060] [07:37.170] [07:41.130] [07:46.040] [07:46.580]家族として暮らし続けて どれだけの時間が経っただろう [07:53.290]依頼されての仕事であることなど すっかり意識から消えて [08:00.240]まるでずっとそうであったかのように [08:04.360]家族の一員として馴染んでいた [08:10.080] [08:11.010]ある日 彼にとって都合の悪い嫌な噂を耳にしてしまう [08:25.990] [08:26.940]「——詩人が長い旅を終えてこの街に帰ってくるらしい」 [08:37.530] [08:48.240]思いもよらないことにセリルは苦悩した [08:57.660]「ヤツが帰ってきたら、俺の居場所はどこにもなくなってしまう」 [09:07.970] [09:08.540]失ってしまうんだ 手に入れた家族も 幸せも全て——全てを [09:18.010] [09:18.700]視界が闇に閉ざされて 一人の夜を思い出してしまう [09:25.610]絶望に満ちた孤独な部屋 生きがいのないあの日々 [09:34.880] [09:35.600]『呆然としながら帰宅すると [09:37.970]可愛い子供達とレイラが笑顔で出迎えてくれる [09:42.260]そして今夜もあの詩をと、せがまれて……』 [09:46.950] [09:47.220]「だめだ、この場所を失ったら、俺は——」 [09:50.710] [09:51.550]『家族が寝静まった頃、隠し持っていた刃物を持ち出し [09:56.110]静かに家を出る [09:58.320]荒廃した街の入り口で息を殺すように [10:02.450]存在を殺すようにして張り続ける時間は [10:06.220]実際にはほんの数日ではあったけれど [10:09.710]途方もなく長いものに感じられて [10:14.920]街に帰ってきた詩人を無言で刺し殺し [10:18.510]その死体を老婆のところへと運んでゆく [10:22.640]はじめて人が殺せたんだね?と嬉しそうに笑う老婆。 [10:28.130]後の処理を頼み、言葉もなくその場を後にして帰宅の途についた [10:34.830] [10:35.600]「なんで帰ってこなかったの?」 [10:38.980]「心配したんだよ [10:42.300]また旅に出てもう戻ってこないのかなって [10:49.050] [10:49.230]数日家を空けただけで こんなにも心配してくれる [10:56.060]泣きじゃくる二人と [10:57.540]目を赤く腫らしたレイラを強く抱き締める [11:04.990] [11:05.820]「大丈夫、どこにも行きはしないよ [11:09.600]だって僕らは家族なんだから [11:13.230]その夜は幸せな部屋の中で 家族の詩が [11:22.220]その合唱がいつまでも響いて [11:27.760] [11:28.450]これが愛という欲望か それは瞬間にして永遠だった [11:35.490]根源的な価値観さえ 全てを書き換えて [11:42.150]何を犠牲にしても 手を穢しても 守りたい業深き感情 [11:49.200]いとも容易く人を壊し 思考回路を狂わせる [11:57.220] [11:58.680]「長かったけど、ようやくこれが始まりだ [12:02.850]一人殺せば、次はもっと容易くその手を血に染めるだろうよ [12:08.740]大切な家族のためならなおさらにね [12:13.010] [12:15.590]「家族——? [12:17.410]ねぇ、義父さんより [12:19.280]アレの方がたくさん稼げるっていうのは嘘じゃないよね [12:24.450] [12:25.210]「早くたくさん殺してお金を稼いでくれないかなぁ [12:29.080]そしたら、お母さんを連れてこんな薄汚い街から出て行くんだ [12:33.980] [12:34.710]「ああ、今回の依頼料はあいつの次の仕事の分から [12:39.900]引かせてもらうよ [12:41.910]悪い子たちだね、怖い怖い [12:45.800] [12:46.440]「やだなあ、家族の幸せのためだよ。本当の家族の、ね [12:53.990] [12:56.410] [12:58.770]